デンドリマー
デンドリマーは構造が正確にコントロールされた1から10nmサイズの大きさの樹木状のポリマーで、過去10年間に5,000報以上の論文が発表されるほど、世界各国で研究が進められています。「Dendrimer」は20年ほど前にTomaliaらによってギリシャ語の「dendri-」(樹木状)「meros」(一部)を組み合わせて名づけられました1-2。デンドリマーには大きく分けて2つのタイプ「Fréchetタイプ」と「Tomaliaタイプ」に分けられます。
デンドリマーは、「core」、「interior」、および「surface」の3つの要素から構成されています(図1)。それぞれのコンポーネントが特異な機能を発現すると同時に、ジェネレーションごとに成長していくデンドリマー特有のナノ構造の物性を決定します。

図1 デンドリマーの模式図
まず、「core」はデンドリマー全体のサイズ・形・方向性・多様性を決定する部位です。次に「interior」とは、放射状に広がる枝状のセルが規則的に増えていく部分で、このセルが「interior」の空間のタイプと大きさを決定します。枝状セルの多重度はジェネレーションに対して指数関数的に増えていきます(図2)。また、ある特定の構造&ジェネレーションのデンドリマーにおいて、「interior」の構成と空間の体積によってホスト−ゲスト(あるいはendo-receptor)の性質が決まります。「surface」は反応性・非反応性の末端基で構成され、様々な機能を発現します。「surface」は「interior」と外部とのゲスト分子の出入りをコントロールするゲートの役割もあります。

図2 ジェネレーションの概念
これら3つのコンポーネントによってデンドリマーの物理的・化学的性質(全体のサイズや形、自由度)が基本的に決まります。重要なのはデンドリマーの直径はシェルやジェネレーションに対して直線的に増え、末端の官能基はジェネレーションに対して指数関数的に増えていきます。その結果、末端基の立体障害による「surface」と「interior」の密度の違いが生じるため、一般的に低いジェネレーションではオープンで緩い構造をとり、その一方で、高いジェネレーションではコアの形や方向性に依存する、強固で変形しにくい球状・楕円状・円柱状といった形になります。
| Generation | Surface Groups | 分子式 | MW* | 直径*(nm) |
|---|---|---|---|---|
| 0 | 4 | C22H48N10O4 | 517 | 1.4 |
| 1 | 8 | C62H128N26O12 | 1,430 | 1.9 |
| 2 | 16 | C142H288N58O28 | 3,256 | 2.6 |
| 3 | 32 | C302H608N122O60 | 6,909 | 3.6 |
| 4 | 64 | C622H1248N250O124 | 14,215 | 4.4 |
| 5 | 128 | C1262H2528N506O252 | 28,826 | 5.7 |
| 6 | 256 | C2542H5088N1018O508 | 58,048 | 7.2 |
| 7 | 512 | C5102H10208N2042O1020 | 116,493 | 8.8 |
| 8 | 1024 | C10222H20448N4090O2044 | 233,383 | 9.8 |
| 9 | 2048 | C20462H40928N8186O4092 | 467,162 | 11.4 |
*分子量・直径は共に計算値
デンドリマーの合成法には、コアとなる分子にジェネレーションごとに分子を結合させ枝分かれさせていく「divergent method」とあらかじめ枝の部分を合成して最後にコア分子と反応させる「convergent method」の2つがあります。よって、一般の高分子と比べて構造制御が容易で、これらの構成要素の様々な組み合わせから異なる形およびサイズの化合物を作ることが出来ます。これまでに100以上の構造的に異なるデンドリマー群と1000種類以上の末端基修飾例が報告されており、バイオ・マテリアルサイエンスの両分野での応用が期待されています。最近の文献6-12ではドラッグデリバリー、遺伝子導入、ナノスケール触媒、集光性化合物、分子量・分子サイズ測定用標準物質、光反応性材料、レオロジー調整剤が注目されています。
弊社季刊紙のAldrichimicaActa 2004, 37(2), 39 (PDF: 792KB)で、"Birth of a New Macromolecular Architecture: Dendrimers as Quantized Building Blocks for Nanoscale Synthetic Organic Chemistry"と題した、デンドリマーについて詳細なレビューをご覧いただけます。
特徴
- ナノメートルサイズの球状構造の高分子です。不純物が非常に少なく、単分散の化合物です。
- 高度に規則正しく枝分かれした3次元構造で、ナノサイズの内部空間と、表面に多数の反応性末端基(反応点)を持ちます。
- デンドリマーはナノメートルサイズの密集構造によって、高い溶解度と低い溶液粘度を備えています。多くは水溶性ですが、他のポリマーの様に水溶液の粘性が上がりません。また、この性質から、デンドリマーはレオロジー(粘度)調整剤として利用できます3。
- デンドリマー表面には多数の末端基が密に存在し(多価)、表面の末端基の数はデンドリマーの世代とともに増加します。多価であることを利用して、薬剤を密に担持させたり、デンドリマー表面に化学的に接合したイメージング用標識を実現したりすることが可能です4。
- ジェネレーションごとに反応させていくので、分子サイズを正確にコントロールすることが可能です。
- デンドリマーの特性を決める末端基は、最も外側のジェネレーションに適当な官能基を反応させることによって容易に変化させることが出来ます。
- 内部と表面が化学的に明確に分かれたコア・シェル型分子構造を有し、孤立したナノ内部空間をもちます。この特有の空洞を利用して、様々な金属、有機・無機分子を運搬・貯蔵できます。特に、デンドリマーの外部環境とは化学的に不相溶の分子(触媒、薬剤、発色団など)をその内部に閉じ込めたり、放出したりすることが可能です5。
- 表面の末端グループが可溶性やキレート能力に影響している一方で、コアは内部サイズ、吸着力およびcapture-release特性にユニークな特性を与えます。 デンドリマーは細胞膜を通過して細胞内部へ遺伝物質を輸送することができます。
- ほとんどのデンドリマー化合物は非常に低い毒性と低い免疫原性を示します。
- 3次元構造のため、デンドリマーは剪断抵抗力を持っています。
製品リスト
- PAMAM Dendrimers(USサイトの製品リスト)
ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーは最も一般的なデンドリマーで、材料科学やバイオテクノロジーの多くの用途に用いられています。PAMAMデンドリマーはアルキルジアミンのコアと三級アミンの分岐構造からなります。現在弊社では、コアは5種類、表面官能基は10種類、世代はG0〜10のものを取り揃えています。ほとんどのPAMAMデンドリマーは長期保存安定性を高めるためメタノール溶液として提供されています。乾燥させたのち、各用途に応じた溶媒で使用することも可能です。

図3 PAMAMデンドリマーのコアの種類
図4 PAMAMデンドリマーの構造PAMAMデンドリマーの分類 表面基の種類 模式図 Amidoethanol Surface Groups Amidoethanol表面基は中性アルコールグループであり、「amine-functional PAMAM」に比べて、このデンドリマーは極性の低い有機溶媒に高い溶解性を示します。中性アルコールグループの表面は、中性pH環境を必要とする場合に有用です。

Amidoethylethanolamine Surface Groups Amidoethylethanolamineは二つのカチオン性アミンをもつ表面基です。この表面基はデンドリマーにペプチド様アミド結合でつながっていて、第二級アミンのほかに末端の第一級アルコールを持ちます。かなり高い極性を持ち、より短い長さの表面基を持つAmidoethanolデンドリマーより高い反応性を示します。

Amino Surface Groups このデンドリマーの表面は極性で高い反応性を持つ第一級アミンで構成されていて、カチオン性であり、負に帯電した分子とのイオン相互作用や、第一級アミンと共有結合する多くのよく知られた反応剤により誘導体を作製することが可能です。

Hexylamide Surface Groups Hexylamideは疎水性で、長い炭化水素鎖で表面をキャップすることでデンドリマーの疎水性・親油性が強くなります。非極性材料との適合性が高くなります。

Mixed (bi-functional) Surface Groups 「Bi-functional」デンドリマーは二つの異なるタイプの表面グループを持ちます。弊社ではアミノ基とN-2-ヒドロキシドデシル基をそれぞれ75:25と50:50の割合でもつデンドリマーを取り扱っております。

Sodium Carboxylate Surface Groups Sodium Carboxylateはアニオン性の表面基で、このデンドリマーは極性溶媒や水に高い溶解性を示します。特に比電荷やナトリウム塩の性質を利用する場合に有用です。

Succinamic Acid Surface Groups Succinamic acidは酸性の表面グループで、このデンドリマーの表面はアニオン性で、典型的なカルボン酸と反応性を持ち、多彩な反応性を持つカルボン酸塩を表面に作製することが可能です。メタノールに溶けないため、水溶液の形で取り扱っております。

Trimethoxysilyl Surface Groups Trimethoxysilylは加水分解性の反応基で、重縮合反応用やゾルーゲル材料のナノスケール骨格として利用可能です。

Tris(hydroxymethyl)amidomethane Surface Groups このデンドリマーの表面は3官能性アルコールであるtris(hydroxyl methylamine)をベースとした中性水酸基です。PAMAM-OH(amidoethanol表面基)と比べて高い水酸基密度を持ちます。この中性のアルコール表面は、より中性のpH環境が必要な場合に有用です。

3-Carbomethoxypyrrolidinone Surface Groups 3-Carbomethoxypyrrolidinoneは極性・酸性の表面グループです。このデンドリマーは低い細胞毒性を持ち、安定なメチルエステル共役結合を形成します。

- Phosphorous Dendrimers(USサイトの製品リスト)
- Polylysine Dendrimers(USサイトの製品リスト)
- Polypropylenimine Dendrimers(USサイトの製品リスト)
- Dendrimer Kits(USサイトの製品リスト)
- デンドロンや超分岐ポリマー

