Tutorial: リソグラフィー・ナノパターニング
(※本記事は2004年に発行された弊社「Materials Scienceカタログ(英語版)62」に掲載されたものです。)
はじめに
リソグラフィーとはインク印刷技術・写真技術に基づいた技術であり、導体、半導体または誘電体などのさまざまな薄膜の回路パターンを基板に焼き付けるプロセスです。ナノパターン化によって、従来のリソグラフィー技術をサブミクロン・スケールに適用することが可能となります。
リソグラフィー
代表的な集積回路は、シリコン、ガリウムヒ素、ゲルマニウムといったさまざまな基板上に、パターン化された金属、誘電体、および半導体のさまざまな薄膜が積層した構造をとっています。このような素子はリソグラフィーと呼ばれる技術で製作され、レジストと呼ばれる感光性材料を基板上に回路パターンを生成するのに用います。図1は、基本的なリソグラフィーの工程を表しています。

図1 リソグラフィー工程の概略図1
通常、有機溶媒で溶かしたレジスト材料は、スピンコーティングにより基板(ウエハ)上に薄く塗布され、溶媒を取り除くために熱処理されます(塗布後ベーク、露光前ベーク、プリベーク)。その後、レジスト膜はマスクを通して(フォトおよびX線リソグラフィーの場合)、または集束電子線を用いて直接、回路パターンが露光されます。その後、一般的には露光されたレジスト膜を現像液に浸して現像し、三次元のレリーフ構造が作製されます。露光によりレジスト膜が現像液に溶解しやすくなる場合、マスクのポジ型画像が生成されます。逆に、露光により溶けにくくなる場合はネガ型画像が生成されます。エッチングやその他プロセスによりレジスト画像が基板に転写されるときは、現像後に残っているレジスト膜が保護マスクとして機能します。この場合、レジスト膜はエッチング液に「抵抗(レジスト)」し、むき出しの領域がエッチングされている間、下層の基板を保護しなければなりません。残ったレジスト膜が最後に取り除かれ、必要な回路パターンが基板に残ります。複雑な半導体素子を製作する際は、この工程が何度も繰り返されます1。
レジスト材料をデバイス製作に用いるには、以下の条件が必要です。
- 金属、半導体、絶縁体などさまざまな基板に接着性を持ち、均一な薄膜のスピンキャストが可能である
- 高い感光性を持つ
- 高い解像度を持つ(光照射による溶解度の差が大きい)
- キャスティング後のエッチング、ドーピング、およびスパッタリング操作に使用されるような高温、強い腐食酸、プラズマなどの極めて苛酷な環境に対する耐性を持つ
初期のレジスト(多くの場合、ノボラックフェノールホルムアルデヒドポリマーをベースとするもの)では、吸収された各光子は、平均1未満の化学反応しか引き起こしませんでした。写真やフォトレジストに応用される、全体の量子効率が1を超える「光可溶化物質」は、1973年にSmithがすでに記述しています2。しかし、Crivelloがカチオン光重合向けの酸発生剤(PAG)として熱安定性と感光性を併せ持つ強酸のオニウム塩を開発するまで3、このアイデアの実用化は困難でした。最初のマイクロリソグラフィー向け新規レジスト材料は、Frechet(オタワ大学)およびWillsonとIto(IBM)の産学協同チームにより報告されました4。この3人は、酸触媒脱保護の可能なポリ(4-[tert-ブチルオキシカルボニルオキシ]スチレン)(poly-TBOCST、PBOCST)にオニウム塩を加えたレジストを作製し、「化学増幅(CA: chemical amplification)」という造語を作りました。1992年1月から1994年6月の間だけで、このCAレジストに関して200編を超える論文やいくつかのレビューが出ています5-10。
CA(化学増幅)レジストでは、露光によって酸(活性種、移動性の触媒)が発生します。この光化学的に生成した酸は、一般にはその後の露光後ベーク(PEB: post exposure baking)の間に、半径5〜25 nmの範囲で拡散し、連鎖的にレジスト高分子と反応しポリマーの溶解性変化を誘起します。したがって、このような化学増幅は全体で最大数百に及ぶ量子効率(材料反応数を吸収された光子数で割ったもの)を実現します。このため、CAレジストは以下の条件である必要があります。
- 感光性を持つ少量(約1〜5 wt%)の触媒前駆体、一般には光酸発生剤(PAG)
- 触媒が存在するときにのみ脱離、付加、または再構成によって反応する多くの官能基を持つ
- 平坦な透明膜に他のすべての成分を分散させることができるポリマー・マトリクス
- 性能や加工性を向上させる界面活性剤、感光剤、抗エッチング剤などの役割を持つ(可能ならば)
報告されているほとんどの組成で、触媒反応を受ける官能基はポリマーに結合し、触媒前駆体は遊離(すなわち、i + ii〜iii)していますが、成分i - iiiまたはivは、原理的に低分子、ホモポリマー、コポリマーまたはポリマーブレンド(すなわちi + ii + iii, i〜ii + iii, i〜ii〜iii)のあらゆる組み合わせで相互結合が可能です1-4。CAレジストは、画像描画時の感受性とコントラストが高い上、初期のレジストより分子設計や合成の柔軟性、露光光源の多様性(UV、X線、電子線)、および乾式(プラズマ)、多層式、その他の高度なパターン転写技術との互換性に優れています。一般にレジスト化合物は、1成分系、2成分系、または多成分系からなる分子設計に基づいて分類可能です。1成分レジスト系は、基板保護、放射線感受性、膜形成特性など、必要なあらゆる特性を兼ね備えていなければならない純ポリマーから構成されます。現代のリソグラフィーで最も普及しているレジスト化合物は2成分系に基づくもので、レジスト機能は2つの別々の成分から発現されます。
レジスト化合物は、露光光源に基づいて、UV(フォト)レジスト、電子線レジスト、およびX線レジストという3つのグループに分けることもできます。紫外光を利用するフォトリソグラフィーは、従来の半導体製造で主に用いられてきた技術であり、さらに今後も主要な技術であり続けるでしょう。X線リソグラフィーは、高解像度、高アスペクト比(高さ-幅の比率)の画像を生成できる次世代の技術であると考えられている一方、電子線リソグラフィーはフォトマスクの製作に用いられます。フォトリソグラフィーはさらに、露光波長に応じて近紫外(350〜450 nm)、中紫外(300〜350 nm)、および遠紫外(< 300 nm)技術に分けることができます。解像度(R)は露光波長(λ)に比例し、露光装置のレンズの開口数(NA)に反比例します。したがって、水銀ランプのg線(436 nm)から高NAレンズを用いたi線(365 nm)への移行は、最小寸法が0.5µmの16メガビット(Mbit)ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー(DRAM)素子の製作を可能にしました。最小形状が0.5µmからはるかに短い80 nmに微細化し続けるにつれ、フッ化クリプトン(KrF、248 nm)、フッ化アルゴン(ArF、193 nm)、およびフッ素(F2、157 nm)エキシマレーザー技術が登場してきています11。
高度なデバイス製作に最適な技術として最終的に248 nmリソグラフィーが採用された最大の理由は、新規CAレジストの開発でした。次世代の光学リソグラフィー技術の候補として考えられているのは、193 nmの光を用いるArFフォトリソグラフィーです。この波長では、従来の芳香族化合物をベースとする材料は透過性が低いために利用できません。よって、脂肪族ポリマーと溶解抑制剤をベースとするレジスト材料の代替化合物が検討されてきました10。アダマンチル基やノルボルニル基などの環状の官能基を側鎖に持つモノマーを導入すると、単純なアクリルポリマーよりエッチング耐性が向上します。この他、脂環構造をポリマー主鎖に直接組み込むことで、193 nm単層レジストとして利用可能なポリマーを得ることができます12。
157 nmの次世代光学リソグラフィーの実現には、新しいレジスト技術の開発が必要となっています。単層の248 nmや193 nm用のフォトレジストは、157 nm波長でのレジストの光学吸収が高いために現実的な代替化合物にはなりません。ポリマーにフッ素を導入することで、次世代レジスト化合物の候補材料が報告されています13。
光化学酸発生剤
光酸発生剤(PAG)はカチオン性光重合開始剤です。光重合開始剤は、吸収された光エネルギー(UV、または可視光)を開始種、つまりフリーラジカルまたはカチオンの形で化学エネルギーに変換するためにモノマー溶液に加えられる化合物です。カチオン性光重合開始剤は、光学リソグラフィー分野で広く用いられています。また、ある種のカチオン性光重合開始剤は、光により誘導される非常に強いプロトン酸あるいはルイス酸の供給源として働く能力を持っているため、写真画像に応用されています。マイクロエレクトロニクス業界でデバイス寸法が年々微細化し続けているのは、光学リソグラフィーの限界を打ち破ることによって達成されています。前述のように、化学増幅レジスト技術では、回路パターンを描く感光性材料(レジスト)はマトリクスポリマーとオニウム塩光酸発生剤(PAG)を含有するのが一般的です10。PAGの選択には、良好なレジスト特性を得るのに必要な酸を発生させる十分な感光性があること、金属性元素を含まないこと、温度安定性など、考慮すべき材料の条件がいくつかあります22。
レジストで利用される通常の光活性触媒は強酸です。トリアリールスルホニウムとジアリールヨードニウム塩は、CAレジストにおける標準的なPAG成分であり、その合成の容易さ、熱安定性、酸(およびラジカル)発生での高量子効率、供給する酸の強酸性および不揮発性が特徴となっています23。単純なオニウム塩は遠紫外、X線、および電子線照射に直接感光性を持ち、中紫外やより長い波長でも十分機能するように構造の改良もしくは光増感剤との混合が可能です。しかし、オニウム塩はイオン性であり、多くは非極性ポリマーと相分離するか、いくつかの溶媒に完全には溶解しません。フロログルシニルスルホン酸(phloroglucinyl sulfate)、o,o-ジニトロベンジルスルホン酸、ベンジルスルホン酸、いくつかの1,1,1-三ハロゲン化物などの非イオン性PAGは、一般に疎水性溶媒に対して高い相溶性を示しますが、多くの場合、熱安定性と酸発生の量子効率は低くなります24。
シリコン・チップの集積密度の驚異的な上昇は、大部分が上述したような半導体素子と回路の製作をパターン化し、光学リソグラフィーが進歩することで達成されてきました。さらに短波長の光源の導入や解像度向上技術により、あと数年間は現状の微細化の速度を保ってデバイスの小型化が進むと考えられますが、近いうちに光学リソグラフィー処理で要求される最小寸法の達成が困難になると考えられています25。EUV、X線、電子線、イオンビーム・リソグラフィーなど、開発中の代替リソグラフィー技術はこのような解像度の限界を乗り越える可能性を持っていますが、現在のところ有力な次世代技術はまだ開発されていません。
ナノインプリント・リソグラフィー
インプリンティング(エンボス加工とも呼ばれる)は、表面に微細なパターンが形成されたモールド(型)を熱可塑性ポリマー薄膜に押し付け、その後Tg付近(通常はそれ以上)に加熱することにより、ポリマーに微細構造を作製する技術です14(図2参照)。ナノインプリント・リソグラフィー(NIL)は、高スループット処理の可能性を持ち、高価で複雑な機器を必要とせず、ナノスケールのデータストレージが可能になります15,16。さらに、従来のデバイス処理技術との互換性も持っています。ナノインプリンティング・プロセスの品質は、温度、溶解物の粘度、モールドへのポリマーの接着など、多くのパラメーターによって決まります17。PMMAはインプリント可能な材料として最も広く用いられてきましたが、インプリントとその後のエッチング工程を最適化するために、その他さまざまな熱可塑性や熱硬化性ポリマーが検討されています18,19。

図2 ナノインプリント・リソグラフィーの概略図
通常、モールドは電子線リソグラフィーで作成され、最小寸法は10〜100 nmの範囲になります。ポリマー薄膜(レジスト)にインプリントした後、さらにエッチングしてパターンを下層の基板に転写します。もしくは、レジストパターン上に金属を蒸着した後ポリマー・マスクを取り除く(リフトオフ)ことで、金属特性を持つナノパターンを生成します。
ソフト・リソグラフィー
ナノインプリント・リソグラフィー(NIL)は、主に硬い熱可塑性ポリマーをエンボス加工(浮き出し)するのに用いられてきました。一方、マイクロコンタクトプリンティング(µCP)などのソフト・リソグラフィー技術の開発により、エラストマー(弾性に優れた高分子)のマイクロ鋳型と転写が大きな注目を集めています20,21。この技術では、スタンプが基板に均一に接触した後、インクの単層がエラストマーのモールド(ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)で作製)から転写されます(図3)。サブミクロンスケールの表面レリーフ構造は、リソグラフィーによってパターンが作製された原版にポリマーを流し込み、硬化させることで、PDMSに容易に導入できます。µCPの利点は、サブミクロン・レベルで化学的に表面をパターン化できることです。

図3 マイクロコンタクトプリンティング(µCP)の概略図。
(図は、ケンブリッジ大学化学科ポリマー合成Melville研究室のHongwei Li氏とWilhelm T. S. Huck氏のご厚意によります。)
エラストマーのモールドには低分子(チオールまたはシラン)のインクが付けられ、清浄な基板(金またはシリコンウエハ)に押し付けられます。スタンプが表面と接触している部分では、インク物質の単分子層が基板に転写されます。第2のチオールまたはシランを用いて背景を埋め、化学的にパターン化された表面が形成されます。
ナノパターン化
サブミクロンスケールでの製造技術は、半導体産業に端を発する高度なリソグラフィー法から、自己組織化をベースとするより新規な材料探索・化学的手法までの、幅広い範囲を含んでいます。現在、100 nmより微細なパターンを描画するための方法が提案、実証されています。たとえば、ナノインプリント・リソグラフィー(マイクロコンタクトプリント、モールドアシストリソグラフィー、ホットエンボス加工リソグラフィーを含む)、近接場光学リソグラフィー、走査プローブ顕微鏡を用いたナノスケールでの直接パターン化、単分子層の自己組織化、ポリマーの相分離に基づくパターン形成などがあります。このように、フォトリソグラフィーを用いずに技術的により単純で安価なナノスケール作製法が探求されています。しかし、この中でナノデバイスを研究するためのナノ構造を持つ物質の作製に適している方法はありますが、残念ながらそれらは多くの場合、商用化するにはスループットが非現実的なほど非常に低いものです。
ポリマー鎖やそのバルク内の構造形態はナノスケールであるため、ポリマーは、ナノパターン化の理想的なビルディングブロックです。近年、ポリマーを利用したリソグラフィーや自己組織化によるナノ構造の製造に関する研究について、レビューされています26。
ポリマー相分離によるナノパターン化
柔軟性を持った、化学的相溶性を持たない異種ブロック(たとえばポリスチレンとポリイソプレン)からなるブロック共重合体は、ナノスケールの構造形態をもつミクロ相分離が可能です。この自己組織化プロセスは、混合エンタルピー(通常は好ましくない方向)やわずかな混合エントロピーが駆動力となって進みますが、2つのブロック間の共有結合がミクロ相分離を阻みます。ミクロ相分離した構造を制御して有用な構造に改良できれば、ブロック共重合体の相分離はリソグラフィーや処理段階を追加せずにナノ構造を作製できる優れたツールになります27。さらに、例えばSSQ-MMA共重合体、SSQ/ポリプロピレン・ブレンドのように、分子サイズと化学的性質から見て十分異なる成分からなるランダム共重合体やブロック共重合体、または基板上の不相溶パターンによって疎水性および親水性ポリマーの混合溶液が、任意のパターンを生成することが示されています26,28。これらのポリマーブレンドに、界面活性剤を用いることで各パターンの表面張力の違いを際立たせることができるかもしれません。
「ソフト」リソグラフィー的なアプローチには、酸化物の階層構造を生成するために、界面活性剤や微粒子を用いたテンプレート法があります29。最近の報告では、分子スケールの有機修飾されたメソ相の蒸発誘起自己組織化(EISA:Evaporation-Induced Self-Assembly)と、巨視的な蒸発プリント法を組み合わせて作製されています。こうすることで、さまざまなスケールでかつ多様な基板上に、機能性階層構造を速やかに作製できます。このような階層構造による作製方法における「インク」の組成は複雑で、各種界面活性剤を添加する場合もあります30。
自己組織化単分子層(SAM:Self-Assembled Monolayers)
高分子電解質は、主に側鎖に荷電基を多数持ち、構成するモノマー単位がイオンに乖離するもので、高い誘電率の溶媒における溶液の特性が、代表的な分子スケールよりも広い範囲に渡って静電相互作用によって規定される物質として定義されます1,31。これらの物質は、水溶性溶媒での分散剤、スラリーや工業廃棄物を凝固させる凝集剤、織物業や製紙業におけるサイズ剤(液体の吸収特性のコントロール)、およびドリルする際に泥や土に加えて研磨損傷を防ぐための調整添加剤として、工業用途に広く用いられています。最近では、分子自己組織化技術による電気伝導性ポリマーの薄膜蒸着32、発光素子向け共役ポリマー33、ナノ粒子34、および非中心対称に整列した二次非線形光学(NLO)素子35に応用されています。
自己組織化単分子層(SAM)技術は単純ではありますが、非常に巧妙な方法であり、さまざまな素子に応用される機能性超分子集合体を製作するための重要なナノスケール・アプローチです36-40。この技術では、適切な基板上にアニオン性およびカチオン性高分子電解質が交互に吸着(交互積層)されます。一般には、そのうち1つの層だけが活性層であり、そのほかは静電引力によって結合した複合多層膜です。あるいは、交互積層法(LbL法)を使ってカプセル構造を作製し、pHや温度の変化などでカプセル内部の物質の送達や放出を制御することが可能です。この技術を用いた、生体分子を含む、高度に整列した、三次元、多機能、反応性薄膜の精密合成法が、バイオテクノロジーや生体材料科学の分野で広く応用され始めています41,42。
SAMで利用されるポリアニオン系候補物質のうち、ポリ(スチレンスルホン酸)(PSSA)とその塩が広く用いられてきました40。この物質の優れた吸着特性、水溶性、厚さの制御が容易な平坦な膜の形成や、活性部位を制御しながら導入可能であることなど、これらはすべて選択性、感受性、反応時間、および安定性の面から、超分子構造をベースとする高性能素子を実現するのに不可欠な特性です。この他にも、PSSAは、チオフェンをベースとする共役ポリマーにドープすることで導電性を持たせる(例えば、PEDOT/PSS(アルドリッチ製品番号483095、560596、655201))ために用いられたり、リグニンにグラフトしたポリアニリン(エメラルジン塩)(アルドリッチ製品番号:561126、561134)のPSSAによる後処理も導電性の向上のために用いられることがあります。
ノルボルナジエン(NBD、アルドリッチ製品番号:B33803)
科学論文や特許文献によると、ノルボルナジエン単量体が、材料科学、農業関連、製薬から基礎研究活動(例えば、一段階反応での水素化反応43,44、タンデム環付加反応45、Pauson-Khandアニレーション46,47といった反応に用いられる新規ナノ触媒反応、および包括的な理論研究48,49)まで、広範なハイテク分野で応用されていることがわかります。これまでに報告されているノルボルナジエンの特性と、その変換反応を利用した応用例を次の表に示しました。

スキーム1 ノルボルナジエン(NBD)とクアドリシクラン(QC)間の異性化反応
| NBD特性 | 変換 | NBDの応用 |
|---|---|---|
| 二環式の歪んだ構造 | クアドリシクラン(QC)への光化学原子価異性化を受け、太陽エネルギーを歪みエネルギーに変換。(スキーム1を参照) | 太陽エネルギー貯蔵システム50 |
| 二環式歪み化合物 | NBDへの逆変換によって、歪みエネルギーが熱として徐々に開放される(スキーム1を参照) | マイクロヒーター51、固体ロケット推進剤用強力結合剤52 |
| ジオレフィン | ノルボルネンジオール誘導体と、ステレオ制御されたROMP誘導ポリマー前駆体の合成開始剤。この反応で熱脱離による特殊な形状のポリアセチレンの合成が可能。 | 導電性ポリマー、ポリアセチレン53,54用シントン |
| 脂環式単量体 | NBDエステル誘導体を精密環化重合し、レジオレギュラー(2-アルコキシカルボニルノルトリシクレン)ポリマーを作製 | 脂環式ポリマーをベースとする193nm用新規レジスト材料55 |
| 構造的に剛直な、三次元架橋剤 | 大豆油スチレン-NBD熱硬化性共重合体の合成 | Tgが周囲条件よりはるかに高い形状記憶ポリマー56 |
| NBD | ROMP合成されたフッ素ポリマー、実用的な高い値の焦電特性と共に、室温における低い誘電損失も備えた、ポリ[2,3-ビス(トリフルオロメチル)NBD] | 性能がPVDFと同等かそれ以上の焦電変換器57 |
| NBD | NBDの環状二量化、共二量化、異性化、およびアリル化における制御された選択性と反応速度 | 広範囲の多環炭化水素の有機化学および石油化学合成用汎用化合物として58 |
| NBD | リンゴ果実の細胞組織におけるエチレン生成阻害とRNAase誘起 | 果物栽培における成長調整剤59 |
| 高度に歪んだNBD | ヒドロシランからアルコキシシランへのパラジウム触媒変換用試薬 | 効率のよい水素スカベンジャー60 |
| 二環式NBD | (+)-スパルテインの15段階合成における開始剤 | (+)-スパルテインの初めての非対称全合成におけるシントン61 |

