薄膜の気相成長(カタログ160ページ)
化学蒸着(CVD)による薄膜形成
化学蒸着(CVDあるいはMOCVD)法は、現在、様々な用途に用いられている金属および金属酸化物・窒化物の主要な薄膜形成技術のひとつです1,2。CVDプロセスでは基板(ウェハー)を1種類以上の揮発性有機金属化合物(前駆体)に曝露させ、基板上での反応もしくは前駆体と基板表面との相互作用により目的とする金属または金属酸化物の薄膜を形成します。通常、揮発性の副生成物が生成しますが、これらは反応チャンバー中にガスを流すか真空にすることで除去されます。一般に、CVD法を用いて作製した薄膜は、物理気相成長(PVD)で作製した膜よりもはるかにコンフォーマル被覆性が優れています。
原子層堆積(ALD)による薄膜形成
ALDプロセスは化学的には化学蒸着(CVD)法とよく似た気相薄膜形成法です1-3。ALDの前駆体材料をCVDにも使用できるという点で類似性が見られますが、必ずしもその逆は成り立たず、物理学的には大きな違いがあります。以下の模式図は、トリメチルアルミニウム(TMA)と水蒸気を用いたAl2O3蒸着を例に、CVDとALDの主な違いを説明しています。

図1 ALDプロセスの1サイクルを示す模式図。図はTMAと水蒸気を前駆体とするAl2O3蒸着の簡略化したモデルです。
CVD法では、前駆体であるTMAとH2Oが同時に反応チャンバーに導入されAl2O3を生成し基板に蒸着するのに対し、ALD法では化学反応が二つの半反応に分割されます。最初に基板がTMAに曝露され化学吸着した単層を形成します(図1a)。吸着後、気相中の過剰のTMAはパージすることにより除去されます。次に基板は水蒸気に曝露されTMA単層と反応しAl2O3の層が形成されます(図1b)。反応の生成物(この場合はメタン)と過剰のH2Oを除去することで膜形成の1サイクルが終了し、これを目的の膜厚が得られるまで繰り返すことができます。いわゆる「ALDウィンドウ」と呼ばれる前駆体特異的な温度領域で処理することで、膜の成長は線形となり厚さをÅ(0.1ナノメートル)規模で制御することができます。
ALDの大きな長所は、このプロセスが、前駆体(TMAなど)で表面を化学的に飽和させる手法に基づくもので、CVDの場合のように一定方向に堆積させる手法ではないという点にあります。したがってALDプロセスは非常に高いアスペクト比のナノポア表面2やエアロゲルのような非常に複雑な材料の表面でもコンフォーマルにコーティングすることが可能となります3。
優れた堆積前駆体は揮発性であるだけでなく、分解経路が予測でき、また分解副生成物が気体であるかまたは高揮発性である必要があります。有機金属前駆体はこれらすべての要請を満たすように設計することが可能ですが、合成には注意が必要です。弊社では、高純度MOCVD前駆体に求められる基準を満たすため、最高純度の出発物質(金属、金属ハロゲン化物、有機金属試薬)ならびに高純度溶媒と有機配位子のみを使用して合成しています。
CVD・ALD前駆体の全製品リストは「マイクロ・ナノエレクトロニクス」のページからご参照ください。

